Agony







あなたはなんて言うだろう?
この、ぼくのあまりに突出した鋭利な思いを、ここで吐き出したとしたら。
舌なめずりをして、ボールペンをいじって、まさに獣じみて喜ぶのだろうか。
それともすっかり真っ赤になった指先五本を生き物のようにして、
ぼくの首を、なんだかマフラーをするみたいに絞めるのだろうか。
ああ、あなたはどこまでも狡猾で、残忍で、気高く、そして愚かだ。
こんなゲームを思いつくくらいの、ねじが外れた狂人だ。
迷った狂気の使い方、嫌悪を逆撫でさせる手口、埃も摘みとる理由づけ。
いつだって完璧を模倣したやり方で、ぼく達をきれいに黒く染めあげる。
そして真っ黒になったぼく達は、あなたを崇め、尊び、跪く。
そんな過程を把握しきったように、あなたは口端だけで、皮肉っぽく笑う。
全部分かった支配者の、どん底の目で。
ぼくはその目を見るたび、あなたを噛み千切ってしまいたい妄想に、半ば強制的に夢想的に襲われる。
この鋭利に実にうまく注がれた、あなたより何倍愚かな半透明の悦楽。
100%の忠誠を軽々塗り替えてしまうような、一匙の抗い。
あなたの素晴らしい話を、押しつぶされた理論を聞いている間でも、
手や口が戦慄き、やたらめたらに震うのをあなたは見ているだろうか?
白いシャツを掴んでも、髪をわざとらしく掻き毟っても、
歯を立てても、何百ぺん机に叩きつけて青黒く腫れようとも、
止まりはしないこの震えにあなたは気付いているだろうか?
己を培う為なら、どんなことでも成すあなた。
ぼくのことを、壁どころかもっとも身近だと感じている素振りを見せるあなた。
いつか、あなたはぼくのあからさまな可笑しさを見つけ、もっとあからさまな嘲笑を送るのだろうか。
猛毒を増した唇で、一種の死刑判決を。あるいは、ぎりぎりの拷問を。
それを思い、滑稽極まりない格好で脅えるぼくをあなたはどう思うだろう?
この出口のないゲームに乗ったときから、ぼくはあなただけを見て生きた。
あなたに従い、あなたを追い、あなたが言えばためらうことなく誰かを刺した。
周りはどうだろう。
彼らも思い思いの感情で喜び、驚き、うち震えているが、
根底にあるのはやはり、あなたへの忠誠と恐怖だとぼくは思う。
驚くほどに皆同じ、コピーにさえ写る整った7人分の思い。
あなたは暴力的なまでの尊厳をどういうやり方でか見事に打ち立て、
駒を手に入れ、それをあざやかに操って己の感情を昇華している。
ああ、あなたは、
あなたはどこまでも素晴らしく、高尚で、愚かしい。
それを実感しながら、それでもぼくの妄想は日を追うごと、恐ろしいくらいに速度をあげる。
ぼくは望むことはあまりにも訝しい下克上なのだろうか。
隙間なく塗り固めたこの思い。何百回も反芻させるくらいの恐怖政治。
本当に死ぬだけだ、と、ぼくはこぼす。
誰も居ない教室で、身体をだぶ付いた手で抱えて、夕日を見ては影に脅える。
いつまでも震える手と口と、湿っていくシャツと。
揺れる矛盾に、あなたの姿が幻影になってぼくの頭を襲っていく。
きれいに横一列に並んだ線で、ひとつだけ漏れ出る反分子。
それがぼくとなる日は、一体、どのくらい近い出来事なのだろう。
その時、あなたはなんて言うだろう?