( さとり )


人の心を読む山男(大猿)。
鹿狩りに行った侍が心を読む六尺の山男に出会い、命からがら逃げ延びる話がある。(対馬『鶏の目釘』)このとき侍を救ったのは刀につけていた家宝の「鶏の目釘」−夜明けを呼ぶ呪具であった。鶏の鳴き声(もしくはその鳴き真似)で鬼や魔が去るのは昔話に多く見られるモチーフで、長崎でも各地に伝えられている。
そういえば今年の「世界妖怪会議」で人形作家の辻村寿三郎が、戦時中に山から下りてくる毛むくじゃらの男をしばしば目撃していたと話していた。人語を解さず、身振り手振りで山の物と里の物を交換していたそうだ。「皆さんの中にも見た事ある人いるでしょウ?」と語りかけていたので、当時は頻繁に見られた光景だったのだろう。 もしかしたら覚は、今なお山の中に存在しているのかもしれない。
覚(鳥山石燕『画図百鬼夜行』)

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