鑵子転ばし ( かんすころ   )


松浦市には、鑵子転ばしという聞きなれない妖怪話が伝わっている。
つづら山に棲む妖怪で、山道を歩いている人に「からってけ〜」と声を掛ける。からってやると請け負うと、背中にものすごい重量で乗りかかってくる。重さに耐え家まで持って帰ると大判小判のぎっしり詰まった壺になるという。(松浦市『お化けつぼ』)また、台風になると山から下りてきて大暴れするという同名の妖怪が伝わっている。(松浦市『かんすころばし』)
前者の話を聞く限りではウバリオンやオッパショ石のようないわゆる「おんぶお化け」の類だが、後者は同名ながら山に棲んでいるという点ぐらいしか共通点が無い。
鑵子というのは茶の湯の時にお湯を沸かす釜のこと。話を聞く限りでは鑵子と全く関係ないじゃないかと思うが、どうも「鑵子転ばし」自体は神奈川などのほうで語り継がれていた別の妖怪のようだ。こちらは小豆洗いに代表される「音の怪」の仲間で、金属製の鑵子を転がしたようなカランカランという音がするので鑵子転ばしと言うらしい。
いったいどのような経緯で松浦市のこの妖怪が鑵子転ばしと呼ばれるようになったのかは全く不明である。
鳴釜(鳥山石燕『画図百鬼夜行』)

幽霊/TOP/蛇帯